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関節の機能障害
目次
関節の機能障害とは
関節の障害には、欠損障害(上肢(肩から手まで)の一定部分を失うこと)、機能障害(関節の動きに関与する組織の損傷により関節可動域(関節が問題なく動くことのできる範囲(角度)のこと)が狭くなり、関節が動かなくなったり、動きが悪くなったりすること)、変形障害(上肢の骨折した部分が固まらなくなってしまうことや曲がったまま固まってしまうこと)や短縮障害(下肢(股から足まで)の長さが短くなってしまうこと)があります。
関節の機能障害とは、例えば、交通事故による骨折、脱臼あるいは靱帯や腱などの軟部組織(骨以外の腱、靭帯、皮膚、脂肪組織、血管、筋組織(筋膜、横紋筋・平滑筋)、末梢神経組織(神経節、神経線維)を指します。)の損傷や神経の損傷による麻痺(まひ)などが原因で関節の動く範囲が狭くなり、関節が動かなくなったり、関節の動きが制限されるようになったり、あるいは関節のすべてが動かなくなったりすることをいいます。
関節可動域の制限が起こる原因
関節可動域の制限が起こる原因には、器質的変化によるものと機能的変化によるものとに分けることができます。
器質的変化
器質的変化とは、組織や細胞が、元の形態にもどらないような変化が起こることをいいます。
器質的変化によるものには、①関節自体の破壊や強直(関節がまったく動かない状態)によるもの、②靱帯や腱、筋肉など関節外の軟部組織の変化によるものがあります。
器質的変化が起こる原因としては、骨折、脱臼、関節内の筋組織の壊死、骨の癒着、靱帯の伸縮・延長、筋肉の血行障害などが考えられます。
器質的変化は、後遺障害の原因となっている身体の器官を物理的に特定することができます。従って、後遺障害と認定されるためには、エックス線写真やCT画像、MRI画像などで器質的な損傷を確認する必要があります。
機能的変化
機能的変化とは、肉眼や顕微鏡などで見ても組織や細胞に形態的な変化が見られないにも拘わらず、その働きに変化があるような場合をいいます。
機能的変化によるものの中には、神経麻痺、疼痛、緊張によるものなどがあります。上肢(肩関節・肘関節・手関節までの3大関節及び手指の部分)には、正中(せいちゅう)・橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)の3本の神経があり、それぞれ手指まで走行しています。そのうち、正中神経は手に取って重要な神経です。
例えば、正中神経麻痺が生じると、神経麻痺の傷害が起こっている場所にもよりますが、親指の付け根の筋力低下、指の屈曲(曲げること)が困難になったり、親指からくすり指の1/2までの掌の感覚障害が生じたりする症状が起こります。
関節の機能障害が後遺障害として認定されるためには
関節の機能障害は、関節可動域の制限(関節可動域(ROM (Range of motion ))とは、身体に障害を負い、運動能力が低下すると関節の動く範囲が狭くなり、関節可動域が制限されてしまうことをいいます。)の程度に応じて評価するものとされていますが、後遺障害として認定されるためには、次の要件を満たす必要があります。
関節の機能障害が後遺障害として認定されるための要件 | |
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要 件 | 補足説明 |
①交通事故によって負った傷害と相当因果関係(その行為からその結果が生ずることが社会通念上相当といえる場合にのみ、因果関係が認められるとする考え方。)を有すること | 相当因果関係の有無は、①事故発生の事実、②事故によって傷害が生じたことの医学的妥当性、③傷害治療の結果として残存する障害の医学的整合性などによります。 具体的には、関節可動域の制限が交通事故による骨折、脱臼、靱帯や腱などの軟部組織、末梢神経組織の損傷や神経の損傷による麻痺(まひ)などに起因する必要があるということです。 |
②将来においても回復が困難と見込まれる精神的又は身体的な障害であること | 交通事故によって負った傷害が治癒したときに残存する器質的変化(組織や細胞が、元の形態に戻らないような変化が起こることをいいます。)を原因とし、将来においても回復が困難と見込まれる精神的又は身体的なき損状態であることをいいます。 |
③その存在が医学的に認めらるもの | 後遺障害(治療の効果が医学上期待できない状態であって、被害者の身体に残された症状が将来においても回復できない機能の重大な障害に至ったもの又は身体の一部の欠損をいいます。)の症状が、神経学的検査所見や画像所見などの他覚的所見(病院での検査や医師による触診・視診などの診察、画像検査(CT・MRIなど)や医学的検査(血液検査・神経伝導検査など)により、客観的に捉えることができる症状のことをいいます。)により、医学的に証明されたものでなければなりません。 関節の破壊や強直、靱帯や腱などの軟部組織の損傷、神経の損傷による麻痺(まひ)などによって関節可動域の制限が起きたことをゴニオメーターによる角度計測、針筋電図検査、神経伝達速度検査、ストレスXP撮影などで医学的に証明しなければなりません。 |
④労働能力の喪失を伴うものであること | 交通事故の被害者がその事故に起因する後遺障害のために身体的機能の全部又は一部を喪失したことをいいます。 なお、労働能力とは、一般的な平均的労働能力をいうもので、被害者の年齢・職種・利き腕・知識・経験等の職業能力的諸条件については、後遺障害の程度を決定する要素にはなっていません。 |
⑤自賠法施行令に定める等級に該当すること | 自賠法施行令別表第1と同第2に定める等級に該当しない限り 後遺障害として認定されません。 |
関節の機能障害の程度
関節の機能障害の程度は、「関節の用を廃したもの」、「関節の機能に著しい障害を残すもの」、「関節の機能に障害を残すもの」の3つに分類されます。
関節の用を廃したものとは、①関節が完全強直又はこれに近い状態(自動(自分で動かすこと)で健側(障害がない側)の可動域の10%程度以下に制限された状態)にあるもの、②関節の完全弛緩性麻痺(筋肉を支配するすべての末梢神経が機能しなくなって、筋肉が弛緩(しかん)して受動運動のままになる状態をいいます。)又はこれに近い状態にあるもの、③人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の1/2以下の可動域角度に制限されているものをいいます。
関節の機能に著しい障害を残すものとは、①関節可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、②人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されていないものをいいます。
関節の機能に障害を残すものとは、関節可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものをいいます。
関節可動域の測定について
関節可動域(関節が問題なく動くことのできる範囲(角度)のこと )の測定については、日本整形外科学会及び日本リハビリテ-ション医学会により決定された「関節可動域表示ならびに測定法」に準拠して定めた「関節可動域の測定要領」に基づき行うこととされています。
関節の機能障害については、障害の存する関節可動域を測定し、原則として健側(障害がない側)の可動域角度と比較して関節可動域の制限の程度を評価するとしています。ただし、せき柱や健側の関節にも障害を残す場合等は、測定要領に定める参考可動域(健常な関節の平均的な運動領域のことをいいます。)角度と比較して関節可動域の制限の程度を評価をするとしています。
測定する角度は、原則として、主要運動(各関節における日常の動作にとって最も重要なものをいいます。)について、ゴニオメーターという角度計を使って基本軸(固定されている骨の軸)と移動軸(測定のために動かす軸)のなす角度を測定します。通常は、5°単位(切り上げ)で測定することになっています。
情報によると、この測定要領とは異なった方法によって測定した関節可動域を後遺障害診断書に記載する医師もいるようなので、その点をしっかりと確認することが重要です。
主要運動と参考運動

関節は、骨と骨のつなぎ目にあたる部分で、骨と骨の間にはわずかな隙間(関節腔)があって、これを袋状の膜(関節包)が包んでいます。
関節包の内側は、滑液(かつえき)という関節内を満たす液体を分泌する滑膜という膜が張りめぐらされています。滑液は、ヒアルロン酸や蛋白質などを含み、粘り気があって、関節の動きを滑らかにする潤滑油の働きをしています。
関節腔は、この滑液によって満たされているので、関節腔に面する関節軟骨で被われた向かい合う2つの骨は滑らかに動くことができるのです。
各関節を動かすことで歩く、しゃがむ、物をつかむなど、人間が生活する上で必要な動作ができるのです。そして、各関節は、屈曲・伸展、内転・外転、内旋・外旋、回内・回外などの動き方をします。関節可動域は、これらの動きの可動域によって評価されます。
各関節の運動は、主要運動と参考運動に分けられます。
主要運動とは、各関節における日常の動作にとって最も重要なものをいい、参考運動とは、日常の動作で主要運動ほど重要でないものをいいます。
関節可動域は、原則として、主要運動の可動域によって評価されます。状況によっては、主要運動と参考運動を併せて関節の機能障害の程度を評価する場合もあります。
なお、主要運動と参考運動以外の関節の運動については、関節可動域の評価の対象とはなりません。
自動運動と他動運動
可動域には、①自動値(自分の力で動かした場合の可動域)と②他動値(医師が力を加えて動かした場合の可動域)の2種類があります。原則として、他動値によって後遺障害等級が評価されますが、麻痺等がある場合は、自動値によって評価されます。
部位別障害の程度を評価する関節運動 | ||
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部位 | 主要運動 | 参考運動 |
せき柱(頸部) | ①屈曲・伸展 ②回旋 | 側屈 |
せき柱(胸腰部) | 屈曲・伸展 | ①回旋 ②側屈 |
肩関節 | ①屈曲 ②外転・内転 | ①伸展 ②外旋・内旋 |
ひじ関節 | 屈曲・伸展 | ありません |
手関節 | 屈曲・伸展 | ①橈屈 ②尺屈 |
前腕 | 回内・回外 | ありません |
股関節 | ①屈曲・伸展 ②外転・内転 | 外旋・内旋 |
ひざ関節 | 屈曲・伸展 | ありません |
足関節 | 屈曲・伸展 | ありません |
母指 | ①屈曲・伸展 ②橈側外転 ③掌側外転 | ありません |
手指及び足指 | 屈曲・伸展 | ありません |
※ 屈曲とは、関節の角度が小さくなるような運動(膝を曲げた状態)、肩関節の場合には、上腕を持ち上げる運動をいいます。 ※ 側屈とは、頭部や腰から上を真横に傾ける(曲げる)動きをいいます。 ※ 伸展とは、関節の角度を大きくするような運動(膝を伸ばした状態)、肩関節の場合には、上腕を後ろに上げる運動をいいます。 ※ 内転とは、体の正中面(身体の左右を中心で分ける面のことです。)に近づける運動(腕を体の軸に近づける動き)をいいます。 ※ 外転とは、体の正中面から遠ざける運動(腕を体から離すような動き)をいいます。 ※ 上腕や大腿などを骨の長軸を軸にしてコマのように回す(捻る)動きを回旋といい、内旋とは、正中面に近づける動き(内側に回す(捻る)動き)をいいます。 ※ 外旋とは、正中面から遠ざけるような動き(外側に回す(捻る)動き)をいいます。 ※ 回内(前腕を回す動き)とは、前腕を前に差し出し、手のひらを伏せるような位置をとることをいいます。 ※ 回外(前腕を回す動き)とは、手のひらを上に向けた位置をとることをいいます。 ※ 撓屈とは、手首が親指側の橈骨に向かって曲がる動きをいい、尺屈とは、逆に小指側の尺骨に向かって曲がる動きをいいます。 |
関節可動域表示及び測定法