トップ>過失割合はどのようにして決められるのか

過失割合はどのようにして決められるのか

目次

 交通事故の示談交渉は、先ず、当事者(加害者と被害者)双方の責任の割合(過失割合)を決め、被害者にも過失がある場合は、その過失分を相殺して損害額を決定します。

 過失割合とは、交通事故による当事者間の責任(過失・不注意)の割合をいい、過失相殺とは、被害者にも過失がある場合は、当事者間で損害を公平に分担するため、被害者の過失相当分を加害者の負担すべき損害賠償額から差し引くことをいいます。

 例えば、加害者の過失が8割、被害者の過失が2割で、損害額が加害者100万円、被害者500万円だった場合に、過失相殺によって双方が受け取れる金額は次のようになります。

項 目加害者被害者
過失割合8020
損害額100万円500万円
相手方への請求金額100万円×20%=20万円500万円×80%=400万円
過失相殺後の受取金額0円400万円-20万円=380万円

 現在、過失相殺率については、東京地裁民事第27部(交通部)編の『民事交通訴訟における過失相殺率等の認定基準』、日弁連交通事故相談センターの認定基準、東京三弁護士会交通事故処理委員会の認定基準が公表されていて、実務では、これらを参考にして過失相殺率の認定がされています。

 過失相殺率の認定基準は、事故類型を①歩行者と四輪車・単車の事故、②歩行者と自転車との事故、③四輪車同士の事故、④単車と四輪車との事故、⑤自転車と四輪車・単車との事故、⑥高速道路上の事故、⑦駐車場内の事故の7種類に分類し、過失相殺率を道路交通法の優先権の有無によって判断する基本要素と、事故の状況に応じた修正すべき事情を加味して判断する修正要素とを組み合わせたものとしています。なお、修正要素には、加算要素と減算要素とがあります。

 例えば、民事交通訴訟における過失相殺率等の認定基準では、
 夜間、商店街の幹線道路に設けられた横断歩道上を黄信号であるにもかかわらず横断していた歩行者が、酒に酔い、しかも徐行運転することもなく右折してきた乗用車に衝突され負傷した場合の歩行者の過失相殺率は、次のようになります。
 ① 歩行者の基本過失割合は20%に対して
 ② 衝突場所が商店街のため5%減算
 ③ 加害車両が酒気帯び運転で減速措置をとらない重過失のため20%減算
 ④ 被害者の夜間の幹線道路の横断の不注意により15%加算
 よって、過失割合は、20−(5+20)+15=10%になります。

過失割合の修正要素

 「民事交通訴訟における過失相殺率等の認定基準」では、事故類型別に次のような修正要素(加算・減算要素)が挙げられています。

歩行者と車の事故の場合

歩行者の基本過失割合の修正要素
修正要素内   容







加算要素
夜間 夜間は、歩行者から前照灯を付けた車を容易に発見できるのに対して、車からは歩行者の発見が必ずしも容易ではないので歩行者や自転車の過失が5%加算される場合があります。
幹線道路 幹線道路とは、歩車道の区別があり、車道幅員が概ね14mル以上で車が通常高速度で走行していて通行量も多い国道などをいい、このような場所では、歩行者等も通常の道路に比べより一層の注意義務が要求されるため、 歩行者や自転車の過失が5%加算される場合があります。
直前直後横断・佇立・後退 直前直後の横断とは、歩行者は左右の安全確認をすれば容易に事故を避けることができるのに、車からの発見は容易ではないので歩行者側の加算要素(5%程度)としたものです。
 佇立とは、横断中に急に立ち止まることをいいます(後退車の後退前から佇立していた場合は、歩行者側を減算します。)。
 後退とは、後ろにさがることをいいます。
横断禁止の規制あり道路標識等により歩行者横断禁止とされている場所での横断は、歩行者側の加算要素(5%程度)とされます。











減算要素
住宅・商店街 人の通行が多い場所は、車の通行にはより一層の注意が必要です。 通勤通学時間帯の会社や学校周辺なども修正される場合があります。反対に人通りの絶えた深夜などは、修正されません。
児童・高齢者 児童とは、概ね6歳から13歳未満の者(小学生)を、高齢者とは、概ね65歳以上の者をいいます。判断能力や行動能力の低いものを特に保護すべきであることから、歩行者や自転車運転者が児童又は高齢者である場合は 、過失が5~10%減算されます。
幼児・車いす通行者等 幼児とは、概ね6歳未満の者を、車いすによる通行者等とは、杖を携え又は盲導犬を連れて通行している目の見えない者、耳の聞こえない者などをいいます。
集団横断 集団横断の集団とは、集団登校のように数人が外形的に見て同様な行動をとっている場合をいいます。
 歩行者が集団で横断や通行をしている場合は、歩行者の発見が容易になり車側により重い過失が認められるので歩行者の減算要素とされたものです。
車の著しい過失 車の著しい過失とは、脇見運転などの前方不注意の著しい場合、酒気帯び運転、右折左折の徐行義務違反、著しいハンドルやブレーキの操作の不適切などで重大な過失よりやや程度の軽いものをいいます。この場合、歩行者側の過失割合が10%程度減算されます。
車の重過失 車の重大な過失とは、居眠り運転、酒酔い運転、無免許運転、時速30㎞以上の速度違反、 過労運転、薬物などにより正常な運転ができないおそれがある場合などが該当します。この場合、歩行者側の過失割合が20%程度減算されます。
歩車道の区別なし 歩車道の区別がない道路では、運転者の注意義務はより重くなるので歩行者の減算要素とされています。

自動車同士の事故の場合

自動車同士の事故の修正要素
修正要素内   容
著しい過失 著しい過失とは、脇見運転などの前方不注意の著しい場合、酒気帯び運転、右折左折の徐行義務違反、著しいハンドルやブレーキの操作の不適切などで重大な過失よりやや程度の軽いものをいいます。
重過失 車の重大な過失とは、居眠り運転、酒酔い運転、無免許運転、時速30㎞以上の速度違反、 過労運転、薬物などにより正常な運転ができないおそれがある場合などが該当します。
大型車 大型車は危険が大きく、又交差点を大きく閉鎖する形になることから、運転手の注意義務が高いとして過失が加算されます。交差点における事故の場合は、大型車の過失が5%程度加算される場合があります。
道交法第50条違反の交差点進入 対向直進車線が渋滞していて直進車が交差点内に入ってはいけない場合をいいます。
直近右折 交差点において直進車の至近距離で右折する場合をいいます。「直近」となる程度について、直進車が通常の速度で停止線を越えて交差点に入る付近まで来ている場合に右折を開始した場合には直近であると解されています。
早回り右折 道交法第34条第2項に定められている「交差点の中心の直近の内側を進行する右折の方法」によらない右折をいいます。違反者の相手方の過失が10%程度減算される場合があります。
大回り右折 道交法第34条第2項において「右折しようとする場合にはあらかじめできる限り道路の中央によらなければならない」と定めているにもかかわらず、中央によらない右折をいいます。違反者の相手方の過失が10%程度減算される場合があります。
既右折 右折しようとする車が、すでに対向直進車線に入っている場合で、対向直進車が少しスピードを落とせば事故が避けられた場合をいいます。
合図遅れ 合図の義務がない方の過失が5~10%程度減算される場合があります。
合図なし 合図の義務がない方の過失が10~20%程度減算される場合があります。
徐行なし 徐行の義務のある方の相手方の過失が10%程度減算される場合があります。
ゼブラゾーン走行 ゼブラゾーンは、道路上にしま模様で書かれた部分で、車両の走行を誘導するためにあるもの(導流帯)で、みだりに走行すべきでないとするのが一般的です。
 ゼブラゾーン走行は、10~20%程度加算されることがあります。
夜間で明るいところ 夜間における路上横臥者の事故で、街灯などで明るい場合は減算されます。
(赤信号側の)明らかな先入 信号待ち後、青で発進する際、軽度の注意で赤信号無視車両を避けられるのに、 信号のみを見て発進して衝突した場合などです。
見通しのきく交差点 信号機のない交差点では見通しのきかない交差点での事故が基本とされていますので、 見通しのきく場合は修正される場合があります。
道交法第27条第1項違反のあるとき 被追越車は追いついた車両の速度より遅い速度で引き続き進行するときは、 速度を増してはならないとされています。

自転車と自動車の事故の場合

自転車の基本割合の修正要素
修正要素内   容





加算要素
高速度進入 「高速度」とは、概ね時速20㎞を超過している速度をいいます。
夜間 夜間においては、車両から自転車の発見が必ずしも容易ではないのに対し、自転車からは車両のライトにより、車両を容易に発見できることから加算要素とされています。
自転車の著しい過失 酒酔い運転、脇見運転、二人乗り、制動装置不良、無灯火などが該当します。いずれも道交法違反となりますが、 事故態様からみて修正を行うのが適切な場合のみ修正がされるようです。
自転車の重過失 手ばなし運転などが該当します。




減算要素
横断歩道進行 横断歩道を通過する場合には、四輪車などの運転者が横断歩道付近については、歩行者保護のため慎重な運転をするであろうとの信頼が生じることから、自転車側の減算要素とされています。
児童・高齢者 児童とは、概ね6歳から13歳未満の者(小学生)を、高齢者とは、概ね65歳以上の者をいいます。
四輪車の著しい過失 脇見運転など前方不注視が著しい場合、酒酔い運転に至らない酒気帯び運転、速度違反のうち時速15㎞以上30㎞未満の速度違反、著しいハンドル又はブレーキの操作ミスなどです。
四輪車の重過失 居眠り運転、無免許運転、時速30㎞以上の速度違反、道交法上の酒酔い運転、ことさらの嫌がらせ運転など故意に準ずる加害行為などです。