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任意一括対応とは

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 任意一括対応(以下「一括対応」という。)とは、加害者が任意保険に加入している場合、任意保険会社が自賠責保険と任意保険とを一括して、交通事故の被害者の治療費等を直接医療機関に支払ってくれることをいいます。この場合、被害者は、任意保険会社から一括対応をすることの同意を求められます。
 なお、この一括対応は、あくまでも任意保険会社のサービスであって義務ではありません。

 ちなみに、任意保険会社が一括対応をしてくれれば、被害者が治療費等を自己負担する必要はなく、任意保険会社が医療機関と治療費の支払いに関するやり取りをしてくれるので、一括対応は、被害者にとって得策といえます。

 けれども、後遺障害についても任意保険会社に一括対応をしてもらうと、後遺障害等級認定申請が事前認定によることになり、被害者にとって不利な資料が提出される恐れもあるので、症状固定になるまで任意保険会社に一括対応してもらうのがベストな選択といえます。

 また、被害者が初めから一括対応を拒否すれば、治療費を自己負担することになりますので、拒否する場合は、治療費の自己負担を軽減するために健康保険を使うのが肝心です。又、後遺障害の等級認定申請も被害者がすることになりますが、被害者請求に必要な自賠責用の診断書と診療報酬明細書は作成してくれません。そのため、被害者が医療機関に対してこれらの書類の作成を依頼する必要があります。

治療費が打ち切られることも

 任意保険会社は、事故後しばらくの間は一括対応をしていても、治療が長引くと治療費について一括対応を止めてしまうことがあります。治療費の打ち切りです。

 任意保険会社は、業界で目安としている「DMK136(打撲(D)は1か月、むちうち(M)は3か月、骨折(K)は6か月)」に基づいて、一方的に治療費の打ち切りを宣言してきます。しかも、その後の休業損害や傷害慰謝料も支払ってくれないこともあります。
 
 たとえ、任意保険会社が治療費の打ち切りをしたからといって、通院そのものを止める必要はありません。なぜなら、通院治療は、医師が治癒又は症状固定したと判断するまでは継続する必要があるからです。

 治療費の打ち切りを宣言された場合は、主治医から任意保険会社に「治療を継続する必要があること」「症状とケガに因果関係があること」などを説明してもらえれば、治療費の打ち切りを撤回する可能性があります。

 治療費が打ち切られて被害者が治療費を自己負担したとしても、その後に示談が成立した場合や事故による損害として認められた場合は、加害者側の任意保険会社がその分を負担することになります。

 また、被害者が人身傷害保険付きの任意保険に加入していれば、被害者側の任意保険から治療費の支払を受けることが可能ですし、加害者側の自賠責保険会社に被害者請求をして治療費を回収する方法もあります。
 なお、自賠責保険が定める傷害の支払限度額は、治療費・休業損害・傷害慰謝料を合わせて120万円ですので、被害者が自己負担した治療費の合計金額が120万円を超える場合は、超過分の治療費は自賠責保険から支払らわれません。

治療費の打ち切りの有効性は

 一括対応に関する最高裁の判例はありませんが、下級審の裁判例では、一括対応は、任意保険会社の義務ではなく便宜上(サービスで)行われるもので、立て替え払いに過ぎず、支払い義務の存在を認めるものではないと判示しています。従いまして、任意保険会社が一括対応後において治療費の打ち切りをすることは有効であるといえます。

 大阪高判平成元年5月12日交民22巻3号567号で、医療機関が任意保険会社に治療費の請求を行った事案では、「一括対応は、保険会社に対し医療機関への被害者の治療費一般の支払い義務を課し、医療機関に対し保険会社への右治療費の支払請求権を付与する合意を含むものではないと解するのが相当である」と判示しています。

 東京地判平成23年5月31日交民44巻3号716頁で、任意保険会社が被害者の治療を行った医療機関に対し、過剰な診療による報酬相当額分と過大な診療報酬単価相当額分の不当利得返還請求を行った事案では、「原告は、被害者が負担する診療報酬を立て替えて被告に対し支払うにすぎないのであるから、原告が被告に対し本件の各交通事故を原因として不法行為に基づいて生じる損害賠償金相当額を超える診療報酬を支払ったときは、・・・被告はこれを不当に利得したと解することが相当である」と判示し、過剰診療部分の不当利得返還請求を認容しました。